へいこうな毎日!

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大学化学 置換反応と脱離反応個人的まとめ・・・の途中経過2

このエントリーの続き。文章や内容に是非ご指摘ください。

 

〇SN2と基質の構造

 SN2機構で求められる基質の構造は、先の反応機構を基に説明ができる。求核種が十分に攻撃が可能である構造が最適だが、それはどういう構造か。求核種は背後から攻撃をするため、立体障害の少ない構造が求められる。つまり、三級よりも二級、二級よりも一級炭素が適しているということになる。また、一級炭素でも枝分かれした置換基があればあまり有利にはならない。

 HOMO/LUMOの観点から説明してみる。炭素-脱離基の結合の反対側に反結合軌道が存在し、これがLUMOに当たる。求核種のHOMOとLUMOとの相互作用で安定化する。二つの軌道のエネルギー差が近ければ近いほど安定化への寄与は高い。HOMOを相互作用させるため、LUMOの周囲の立体障害が少ないほど反応が進むことが理解できる。

 

 〇SN2と求核試薬

 基質の構造同様、嵩高い求核試薬は基質との立体障害を生じLUMOに近づくことは難しくなってしまう。立体構造の次は求核性について考えてみる。先に述べたとおりルイス塩基であるほど求核性は高い。一般的にみられる傾向として、孤立電子対を有する元素が周期表で下の元素であるほど求核性は高い。電子殻が次第に大きくなっていくため、HOMOの大きさも比例していき相互作用を起こしやすくする。

 

 〇求核試薬と溶媒

 ハロゲン化物イオンを求核試薬として使いたい場合、注意することは塩基性も有していることである。求核性だけで見れば周期表の下であるほど優秀な求核試薬であるが、塩基性でいえばF,Clの順で強いと言える。塩基性を下げ、より求核性を強調させることはできないだろうか。そこで溶媒の種類がそれぞれの性質にどれほど影響があるかを調べよう。

 極性プロトン溶液(アルコールや水)を使用する場合のハロゲン化物の挙動を考える。ハロゲン化物イオンは溶媒のプロトンへ塩基として振る舞う。また溶媒分子を引き付けるため嵩高くなってしまう。これらから、Clは塩基としては十分なふるまいを見せるが、求核性を示す機会がなくなる。結果としてIに比べて1/160倍以上の反応速度を示すことになる(ただでさえ求核性がおとっているのにだ!)この塩基性を下げるにはまずプロトンを使わないことである。それがかなえば、極性を持つ非プロトン溶媒分子は負の電荷に偏る原子部分をカチオンに向かせるようになる。ハロゲン化物イオンは無駄に嵩高くなることを免れ、本来の求核性を発揮できることになる。つまり塩基性を求核性として扱えるので、求核性の順序は逆になり、Clほど強い求核種になる。